中小企業診断士 財務・会計 平成29年度 H29 第6問 税効果会計 過去問解説
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以下、本文です。
第6問
税効果会計に関する記述として、最も適切なものはどれか。
ア 受取配当金のうち益金に算入されない金額は、繰延税金負債を増加させる。
イ 交際費のうち損金に算入されない金額は、繰延税金資産を増加させる。
ウ 税法の損金算入限度額を超える貸倒引当金繰入額は、繰延税金資産を減少させる。
エ 税法の損金算入限度額を超える減価償却費は、繰延税金資産を増加させる。
解説
税効果会計と聞くと難しいイメージを抱く方が多いと思いますが、この問題を解くためにやることは2つだけです。この解説を読めば税効果会計に対する拒否反応は無くなると思います。
この投稿では税効果会計の簡単な解説と問題の解き方に留めるので、詳しい解説は「徹底解説|税効果会計」を確認してください。現在は編集中なので、完成次第リンクを張ります。
①一時差異か永久差異かを見分ける。
②一時差異なら、繰延税金資産になるか、繰延税金負債になるかを考える。
以上の2点だけで問題を解くことが出来ます。
前提として会社法上の収益・費用・利益、税法上の益金・損金・所得の違いを知っている必要があるので証券アナリスト 財務分析 2015年H27春 第1問 問7 収益認識基準 過去問解説を確認してください。
税効果会計の説明→繰延税金資産・繰延税金負債の説明→問題の解き方の順に記述します。
税効果会計とは、
会社法による会計(以下、企業会計と呼ぶ)と税法上の会計(以下、税法会計と呼ぶ)の(将来解消される可能性のある)ズレ=一時差異を調整するためのものです。将来においても解消されないズレ=永久差異は税効果会計の対象外であり、調整されません。
一時差異は企業会計上は収益・費用として認められるが、税法会計上は益金・損金として認められない科目や金額があるために発生します。
↓画像左上段の左側は企業会計のP/Lです。収益・費用が色々あって税引前当期純利益が1,000となり、右側の税法会計では、その1,000に一時差異となる益金を300加算・損金を100減算し課税所得金額を計算しています。課税所得金額は1,200になったので、法人税率40%を掛けると、480が法人税額です。(ちなみに、480は税務署に現金で支払うのでこの時点でキャッシュアウトが生じます。)
企業会計上では利益1,000で良いのに、税法会計上では損金100が減算されるものの、益金300が加算され、課税所得金額は1,200となり、課税対象の金額が増えてしまい、この会社にとっては残念ですね。ただ、税法会計は支払う税金額を計算するためのものなので仕方ありません。
税法会計で計算した法人税額(=↑画像では法人税等としていますが、正しくは「法人税、住民税及び事業税」です)を企業会計の税引前当期純利益から引き、当期純利益520が得られました。この当期純利益520は説明の計算過程だけで出てくるものであり、なんの意味もありません。
しかし、税引前当期純利益1,000に法人税率40%を掛けると、企業会計上の法人税等は400であり、当期純利益は600になるはずです。
この、税法会計で歪められた当期純利益520と、企業会計上の本来の当期純利益600とのズレ80を調整するのが税効果会計です。
税効果会計を適用した企業会計のP/Lが左下段です。
税法会計で計算した法人税等480から、法人税等調整額として80を引くことで、企業会計上の法人税等400が得られます。
その400を企業会計上の税引前当期純利益1,000から引くことで、企業会計上の本来の当期純利益600が得られます。
以上が、税効果会計による企業会計と税法会計のズレの調整過程です。
繰延税金資産とは、
上の例のズレ80は今期払い過ぎた法人税(前払いした法人税)と考えてください。
今期払い過ぎた法人税80の計算方法は、画像の左下の仕訳で説明しています。
一時差異として(加減されている益金300に税率40%を掛けた120)-(減算されている損金100に税率40%を掛けた40)=80
として計算できます。
このズレ80は将来、一時差異が解消されたときに課税所得の計算上減算できる(支払う税金を少なくできる)ので、将来減算一時差異と言います。
つまり、税効果会計を適用したとしても、一時差異によって生じた税金の払い過ぎは、将来一時差異が解消されたときに減算できるので、トータルで支払う税金は結局変わりません。
さて、このズレ80はB/S上どうやって計上されるかが重要です。
仕訳では
繰延税金資産(B/S) 80/法人税等調整額(P/L) 80
としてB/Sの資産の部に繰延税金資産を80計上し、P/Lでは法人税等調整額-80として法人税等480から引きます。ややこしいですが、法人税480は企業会計上の費用なので、480-80=400となり、このズレ80は企業会計上の費用の減少項目=利益の増加項目です。
一時差異が解消されたとき(税法会計上も損金として認められたとき)は、B/Sの資産の部から繰延税金資産を取り崩すことで、企業会計上の費用として計上しますが、今度は逆の税効果会計仕訳をすることで法人税調整額+80が発生します。
法人税等調整額(P/L) 80/繰延税金資産(B/S) 80
としてB/Sの資産の部から繰延税金資産80を減らし、P/Lでは法人税等調整額+80として法人税等に足します。解消期の税引前当期純利益が500、法人税等が200、新たな一時差異はないものとすると、企業会計上の法人税等は200+80=280となり、解消期の法人税等調整額+80は企業会計上の費用の増加項目=利益の減少項目となります。
↓は税効果会計の有無による計上金額の差まとめです。
税効果会計なし
一時差異発生時:税引前当期純利益1,000、当期純利益520、法人税等480(実際に支払う法人税480)
一時差異解消時:税引前当期純利益500、当期純利益300、法人税等200(実際に支払う法人税200)
合計:税引前当期純利益1,500、当期純利益820、法人税等680(実際に支払う法人税680)
税効果会計あり
一時差異発生時:税引前当期純利益1,000、当期純利益600、法人税等400(実際に支払う法人税480)
一時差異解消時:税引前当期純利益500、当期純利益220、法人税等280(実際に支払う法人税200)
合計:税引前当期純利益1,500、当期純利益820、法人税等680(実際に支払う法人税680)
以上のように、税効果会計を適用した場合でも、全ての項目の合計額は結局変わらないことが分かります。
繰延税金負債とは、
繰延税金資産を計算した際の、(減算されている損金100に税率40%を掛けた40)の部分が将来加算一時差異です。
この問題では繰延税金負債は出てこないので詳しく説明しませんが、上述の繰延税金資産及び将来減算一時差異の逆のものだと考えてください。
関連語句の意味は理解できたでしょうか?以下、問題の解き方です。
①一時差異か永久差異かを見分ける。
②一時差異なら、繰延税金資産になるか、繰延税金負債になるかを考える。
の順で解くことができます。
①一時差異か永久差異かを見分ける。
以下の一覧は暗記するしかないです。一時差異には一覧以外のものもあるようですが、正確な一覧というものが見つからなかったので、一時差異の一部だと思ってください。
一時差異は「法人税の確定申告書別表4」で計算するので
所得の金額の計算に関する明細書(簡易様式pdf)、別表四 「所得の金額の計算に関する明細書」(pdf)国税庁のサイトを参考にしています。
将来減算一時差異一覧
減価償却超過額、貸倒引当金繰入超過額、売上計上漏れ、その他有価証券の評価差額、繰越欠損金、繰越外国税額控除、事業税の未払計上額
将来加算一時差異一覧
固定資産の特別償却、法人税の未収計上額、住民税の未収計上額、売上原価計上漏れ、資産評価益否認、その他有価証券の評価差額
ア 「受取配当金のうち益金に算入されない金額」は上記一覧に含まれていないので永久差異です。永久差異は税効果会計の対象外なので×。
イ 「交際費のうち損金に算入されない金額」も上記一覧に含まれていないので永久差異です。永久差異は税効果会計の対象外なので×。
②一時差異なら、繰延税金資産になるか、繰延税金負債になるかを考える。
上の方でも解説していますが、将来加算一時差異に税率を掛けたものが繰延税金負債、将来減算一時差異に税率を掛けたものが繰延税金資産ということを覚えてください。
ウ 「税法の損金算入限度額を超える貸倒引当金繰入額」は、将来減算一時差異です。企業会計上、貸倒引当金繰入額は当期の費用に計上されますが、税法会計上は実際に貸倒が発生した段階で損金として認められます。将来減算一時差異に税率を掛けたものが繰延税金資産になりますので、繰延税金資産を減少させるとしている選択肢は×です。
エ 「税法の損金算入限度額を超える減価償却費」も、将来減算一時差異です。企業会計上は当期の費用に計上されますが、税法会計上は減価償却している資産を除去や売却処分した段階で損金として認められます。将来減算一時差異に税率を掛けたものが繰延税金資産になりますので、繰延税金資産を増加させるとしている記述は正しいです。
解答
エ
合っていました。冒頭でも書きましたが、税効果会計は名前からして難しそうですが、問題を解くことは意外と簡単です。
①一時差異を暗記
②将来減算一時差異なら繰延税金資産、将来加算一時差異なら繰延税金負債
この2点を覚えるだけです。
ただ、ちゃんと理解するためには簿記の知識も必要になってきます。診断士試験は分かりませんが、アナリスト試験では実際に税効果会計の計算をさせる問題も出ますので、「徹底解説|税効果会計」も確認して理解を深めてください。現在は編集中なので、完成次第リンクを張ります。
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